木田金次郎の作品の中に、「2602」などという年代表記をした作品があります。これは神武天袋即位から数えて 1940( 昭和 15) 年が「紀元二千六百年」 にあたるとし て、当時の大日本帝国が国威発揚のために行った国家的行事に因むものと考えられます。
このほど木田金次郎美術館に寄贈された作品の中にも「 2601 」年 ( = 1941 年 ) 制作の作品が含まれていたことから、複数の木田作品に「紀元二千六百年」を意識した作品があることが明らかとなりました。
木田金次郎美術館では、開館以来、木田作品の収集活動を続けて参りました。幸い、多くの所蔵者のご協力を得て、 1954( 昭和 29) 年の「岩内大火」以前の作品を含め、画業の各年代の作品を通覧できるまで、コレクションが充実して参りましたが、それでも、作品の所在が最も少ないのが、 1940 年代前半の「戦前・戦中期」です。
このたび、点数は少ないものの、戦前の「紀元ニ千六百年」 に因んだ作品が発見されたことから、木田にとっての戦前・戦中とはどのような時代であったかを、のこされた作品や資料から、当時の時代背景、木田の制作背景を探ろうと試みます。
知られざる戦前・戦中の木田の足跡を、たどっていただければ幸いです。