平成20年度特別展示 木田金次郎の時代「木田金次郎と1950年代」展を開催いたします。
木田金次郎(1893-1962)が故郷・岩内で画壇と距離をおいた制作を続けたことは、独自の輝きをもって、今日高く評価されています。その画業は、有島武郎と出会い、彼の小説『生れ出づる悩み』に描かれたことによる影響も否定できませんが、岩内で着実に地歩を固めた生き方に裏打ちされていると言えましょう。
これまで当館では「木田金次郎の交流圏」として数回にわたり特別展示を開催してまいりましたが、開館14年目を迎えた今年は、このテーマに加えて「木田金次郎の時代」という大きなテーマに取り組んでまいります。その第一弾として、木田にとっての1950年代に焦点を当てます。
木田金次郎の1950年代(50歳代後半から60歳代後半)は、大きな転換点となった時期といえましょう。1953(昭和28)年に初めて大規模個展が札幌で開催され、60歳にして画家としての大きな評価を得ますが、翌1954(昭和29)年、岩内大火による作品の焼失、さらにはその後の再起から、1959(昭和34)年の東京をはじめとする全国巡回個展の開催――。木田にとり、身辺や画風が最も劇的に変化しながらも、かつ画家として充実をみせた時期にあたります。
今回の展覧会では、同時期の北海道美術史の中に木田の画業を置いてみます。幅広い交流圏をもちながらも、一貫して岩内で描き続けた木田。対して、岩内で描き続ける木田を意識しつつ、郷里を離れて制作する同郷の作家たち。また、木田自身が札幌圏などへ出向き、情報を求め、意識をしていたより若い作家たちの動向。これらを、1950年代の木田の作品とともに紹介いたします。
木田と交流の軌跡があった数名の作家の同時代の作品とともにご覧いただくことで、木田金次郎が岩内で描いた意味、他の作家との「同時代性」「差異」について考える機会としたいと思います。