木田金次郎美術館では、これまで風景や花などのモティーフに焦点を当てて紹介することは数多く行ってきましたが、このたび、はじめて「肖像」をテーマに据えることといたしました。
現在判明している木田金次郎による「肖像画」は、十点にも満たず、描かれた時期も特定の一時期に集中しています。したがって、きわめて珍しいモティーフということができるでしょうが、これだけで木田の画業を特徴づけることにはならないでしょう。
そこで、このたびの展覧会では、「木田が描いた肖像画」とともに、「木田を写した肖像写真」をあわせてテーマに据えることで、木田が生き、描いた時代背景を探ってみたいと思います。人物に向かって絵筆をふるった木田の姿と、それぞれの時代に木田を写した写真から、木田の画業を振り返ろうという試みです。
ともに〈ポートレート〉と呼ばれる肖像画と肖像写真。それぞれからどのような表情が読み取ることができるでしょうか。それぞれの時代、それぞれの〈顔〉。この機会に、新たな木田金次郎像を見出していただければ幸いです。